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超音波(エコー)検査

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第3回 超音波検査で膵臓を診るために

はじめに

前2回に亘り、当院の専門とする腹部の超音波検査について概説いたしました。今回は、その中でも特に検査技師の技量で画像の善し悪しが左右される“膵臓”を観察するために取り組んでいることについて、ご説明いたします。
 

膵臓病を見つけるための検査法

本誌を定期的にご覧の方でしたら、当院膵臓病センター長の今泉俊秀による連載記事「膵臓病講座(第54号~第62号:全9回 バックナンバーは当院ホームページから閲覧できます)」をお読みになっているかと思います(膵臓の病気や治療法については、そちらに詳述されています)。その中で、膵臓病を見つけるための検査法は「機能的検査法」と「画像検査法(形態学的検査法)」に大別されると述べられています。腹部超音波検査は後者の1つであり、条件によっては膵臓病を捉えるのに格好の検査法と云えます。その“条件”の中で最も影響されるのが、膵臓を取り囲むように位置する胃や腸等の臓器に含まれるガスです。超音波は物質の中を伝わる音で、ガスに触れると散乱や拡散等を起し伝播しづらくなることから、画像を映し出すことが難しくなります。そのため腹部超音波検査では、この妨げになるガスをできるだけ取り除くことが肝要です。
以上を踏まえ「患者様方により良い条件で検査を提供したい」との想いから講習会等を受講し、以下の3走査法を取り入れました。

  1. 圧迫走査法:超音波プローブ(患者様の体に直接当てるセンサ。探触子とも云います)を他の臓器を観察する時よりも少し強く押し当てて、胃内等のガスを除けながら観察する走査法です。
  2. 飲水法:水50mlを検査時に摂ってもらい胃内に溜め、それを通して胃の裏側に位置する膵臓を観察する方法です。因みに、他院ではミルクティー350mlを飲んでもらった上で検査する方法が増えており、大阪府立成人病センターの報告では、ミルクティーの適度な濁り具合が程良く超音波を通すとのことです。それでは、当院では何故ミルクティーではないのでしょうか。それは350mlという量も然る事ながら、その後に予定している他の検査、特に上部消化管内視鏡検査に影響してしまうという事情があります。そのため、職員に様々な飲み物を試飲してもらい検査を行った結果、辿り着いたのが水でした。
  3. 体位変換法:膵臓は半座位(座ったよりも上半身をやや寝かせた状態)で観察しやすい臓器です。そのため、当院の検査台はベッドではなく美容室等にある電動リクライニングチェアを採用し、椅子を起こしたり倒したり、左右を向いてもらったりして検査を行います。

これらの試行錯誤のうえ、経験を積むことによって検査のスタイルを確立してきました。

当院独自の検査法

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また、右図の緑色の線は病変を見逃さないように、膵臓を観察するためのプローブ走査の手順ですが、これに以下の自分なりの検査手技を加えました。

  1. プローブを患者様の体から離さずに最後まで観察する(離してしまうと一度除けた胃内等のガスが戻ってしまう)。
  2. 深呼吸や息止めの調整をしてもらう。

これらの方法によっても、ガスが妨げになってしまう場合にはプローブを更に押し当てることがあります。検査技師も膵臓を何とか観察したい一心ではありますが、強く押されて圧迫感があるときには遠慮せずにお知らせください。
以上の取り組みにより、当院で腹部超音波検査を受けられた患者様のうち、膵臓に何らかの所見があると診断された割合は、以前は5%程度(2008年度)でしたが、最近では25%(2018年度)と10年間で5倍に向上しました。また、膵臓が観察しづらかったケースは32%(2008年度)から18%(2018年度)に減りました(この中には止むを得ず食後や緊急で行った検査も含まれます)。

まとめ

以上のように、超音波検査において膵臓ほど検査技師を悩ませ、かつ技師のみでは良い画像を映し出すことができない臓器は外にはありません。また、確定診断には超音波検査のみでなく、他の検査結果も含めた医師の総合的な判断が必要となります。
より良い条件で検査を提供するために患者様方にもご協力をお願いすると共に「膵臓病が心配ならば八王子消化器病院で超音波検査を受けたら良い」と皆様からの評価を得られるように、今後も精進して参ります。

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