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膵臓病講座

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第3回 急性膵炎について

はじめに

前2回に亘り、膵臓病の概論について解説いたしました。今回からは具体的な病気について、その症状や原因、治療法等を含めて講義していきます。最初に、膵臓の働きと関わりが深い急性膵炎について解説いたします。

急性膵炎とは

急性膵炎は、膵臓の「自己消化」により発症する病気です。膵臓から分泌される消化酵素は通常、膵臓内では作用しないように安全機能が働きます。この機能が何等かの原因で上手く働かなくなると、膵臓は「自己消化」を始めます。その結果、膵臓に浮腫み、出血、壊死(溶ける)等が生じます。更に、炎症を起こした膵組織から様々な有害物質が血液中に流れ込み、心臓・肺・肝臓・腎臓等の臓器に障害を起こす多臓器不全となり、生命に危険を及ぼします。
急性膵炎の発症者は、年間約35,000人で男性が女性の約2倍程度です。
 ※自らの消化液で臓器を溶かすこと

急性膵炎の症状

最も多い初期症状は上腹部の激痛です。臍からみぞおち周囲に起こり、次第に腹部全体に広がります。仰向けでは痛みが強く、横向きや膝を抱えて海老の様に身体を丸くすると痛みが和らぐこともあります。高齢者や合併症のある重症な場合では腹痛を訴えないこともあり、腹痛と膵炎の程度とは必ずしも相関しません。
他にも、嘔気・嘔吐、背部痛、腹部膨満感、黄疸等の症状があります。突然、激しい症状が生じたり、重症例では腹膜が硬くなる腹膜刺激症状やショック・呼吸不全・神経症状・重症感染症等の危険な症状が見られることもあります。

急性膵炎の原因

急性膵炎の主な原因は、男性ではアルコールが半数を占め、女性では胆石が4割程度に上ります。他に、薬剤、高脂血症、膵腫瘍手術後の合併症等が原因として挙げられます。
アルコールによる急性膵炎では、アルコール成分が膵細胞を直接傷害します。また、アルコールにより膵液が過剰に分泌され、多量の膵液が膵管内圧を高めて膵炎を引き起こします。
胆石と膵炎の関係では、小さな胆石が総胆管内を移動し膵液の排出口を塞いだり、また、内視鏡的膵胆管検査や手術後も同様に、排出口に負荷を生じさせて膵炎を引き起こします。
なお、これらの原因が除去されると殆どの場合、膵臓は元の状態に戻ります。

急性膵炎の診断・重症度

急性膵炎の診断は、血液・尿検査と画像検査が中心となります。問診・触診の後、血液・尿に含まれる膵酵素(アミラーゼ等)を調べます。この値が高いと急性膵炎と診断されます。同時に膵炎の程度や周辺臓器への影響を把握するため、肝機能・腎機能・血糖値・炎症反応・貧血・電解質等も調べます。また、超音波検査やCT検査等の画像診断により、膵臓の腫れ具合や炎症の広がりを観て、重症度判定(軽症・中等症・重症)を行います。なお、急性膵炎は初診時に軽症でも急激に※重症化する可能性があることから、重症度判定を何度も行います。
 ※発症から48時間以内に重症化すると、死亡率が10%以上になる。

急性膵炎の治療

急性膵炎は、病期(発症直後の急性期、症状が快方に向かう回復期、安定期)と重症度により治療法が異なります。

①急性期
絶飲食により膵液の分泌を抑え、膵臓の安静を図ります。発症初期には、膵臓の細胞液が大量に漏れ出し、循環血液量が著しく減少します。そのため、失われた水分や電解質・栄養分を大量の補液(3~6ℓ)で補給します。同時に腹痛を和らげ、感染症や膵酵素の活性化を防ぐ抗生剤や蛋白分解酵素阻害剤を投与します。
なお、膵臓が破壊されて溶ける壊死性膵炎や膵臓周囲に膿が溜る膵膿瘍等は、外科的治療やドレナージ法(体内に管を入れて膿汁等を排出する)が行なわれます。因みに、感染性膵壊死は死亡率が30~40%にも達します。
また、胆石を原因とする場合には、胆汁と膵液の排出口である十二指腸乳頭を内視鏡で切開し、胆石を摘出します。
②回復期
症状が和らぎ、検査値が正常化した状態です。症状再発に注意しつつ、脂肪制限と消化の良い蛋白質を摂取し、食事量を少しずつ増やしていきます。また、消化酵素剤や胃酸分泌抑制剤、蛋白分解酵素阻害剤も継続します。
③安定期
症状再発に繋がる飲酒等の生活習慣を改めると共に、原因となった病気(胆石症・高脂血症等)があれば、引き続き治療します。

まとめ

今回は、急性膵炎について解説いたしました。その治療には、発症初期の正確な診断と適切な治療、そして継続的な観察が重要です。症状が疑われる場合には、専門医にご相談されると共に、飲酒等の生活習慣には普段から注意しましょう。

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