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膵臓病講座

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第1回 膵臓の仕組みと働き

はじめに

「胃が痛い」ので検査を受けたが『異常なし』、処方された胃薬を服用したが症状が改善しないということはありませんか?近年、我が国においては急性膵炎・慢性膵炎・膵癌などの膵臓病が増加しています。膵臓病は目立った特徴的な症状がないことから「沈黙の臓器」と云われています。そのこともあって、特に膵癌では発見が遅れることから「暗黒大陸」と云われ、恐れられる所以です。実際に発見された時には病勢がかなり進んでおり、手の施しようがないことも多く、胃・大腸癌の5年生存率が70%程度である一方、膵癌では10%と低い状況にあります。
膵臓病を早期発見・治療するためには、膵臓の働きや膵臓病の病態、そして検査・治療方法について知っておくことが重要です。そこで本誌では、これから数回に亘り「膵臓病講座」と題して連載してまいります。第1回目は、膵臓の仕組みと働きについて解説いたします。

膵臓の仕組み

(図1)

図1

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膵臓は、漢方医学で云う「五臓六腑(はらわた・内臓)」には含まれていませんが、お腹の重要な臓器です。膵臓(パンクレアス)の語源は、ギリシャ語の『パン(すべて)クレアス(肉の塊)』にあり、我が国においてはオランダ解剖学書を翻訳した宇田川玄真が、新しく『膵:月(肉)+萃(すべて)』と言う漢字を作りました。膵臓は胃の裏側・背骨の前側に位置し、十二指腸・小腸・大腸・肝臓・胆嚢・脾臓等に囲まれた、バナナのような形をした臓器であり、お腹の中で最も奥深くにあります。見た目は、サーモンピンク色で表面を薄い被膜で被われ、あたかも筋子や数の子のように軟らかく、蛭のように背骨前側の大事な血管に張り付いています。(図1)

サイズは、長さが15cm~20cm、幅は5cm、厚さは頭部で3cm~3.5cm、尾部で1cmであり、左右に細長い臓器です。また、重さは約120gあります。(図2)膵臓は3つの部位に区分され、十二指腸付着部の膨らんだ部位は「膵頭部」、脾臓に接する細い部位は「膵尾部」、頭部と尾部の間は「膵体部」と呼ばれ、これらは膵臓の病気を説明する際によく使われる用語です。更に、膵臓内部には膵尾部から膵体部・膵頭部を経て十二指腸へと膵液を流す径2mm~3mmの主膵管が走っています。また、膵頭部には肝臓で作られた胆汁を十二指腸に流す径7mm~8mmの総胆管が通り抜けています。これらの主膵管と総胆管は十二指腸につながる直前で合流し、十二指腸に開口する部分は乳首の先のようになっており「十二指腸乳頭」と云います。(図3)

図2
(図2)

図3
(図3)

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膵臓の働き

(図4)

図4

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膵臓には、主に2つの働きがあります。
1つ目は、食物の消化に必要な消化酵素(炭水化物を分解するアミラーゼ、蛋白を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼ等)を含んだ膵液と呼ばれる消化液(2L~3L)を十二指腸に分泌することです。これを「外分泌機能」と云います。膵液にはアルカリ性の重炭酸塩が大量に含まれ、十二指腸内で胃酸を中和して消化を助けます。なお、膵液の分泌はホルモンや神経系で調節されています。
2つ目は、血糖値を下げるホルモン(インスリン)や血糖値を上げるホルモン(グルカゴン)を産生して血液中に分泌し、血糖を調節することです。これを「内分泌機能」と云います。膵ホルモンは、膵臓内に100万個以上も存在する〝ランゲルハンス島〟で作られ、ラ島は5,000個の内分泌細胞(A細胞:グルカゴン、B細胞:インスリン、D細胞:ソマトスタチン)から構成され、吸収された栄養素や消化管ホルモン、神経系で調節されます。(図4)

 

まとめ

今回は、膵臓の仕組みと働きについて解説いたしました。特に、膵臓の3つの区分である「膵頭部」「膵尾部」「膵体部」は、診察時にも良く耳にする用語です。今後のお話を進めていくうえで大切なことですので、よく覚えておいてください。

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